愛しのマイ☆ドクター

レコーディング

その二日後



まだ二月とは思えないくらい

とても暖かい小春日和の午後に

社長さんが作曲家を伴って

病院へやってきた



レコーディング作業は

僕には特に関係のないことだと

思っていたけど

なぜか医局にわざわざ

社長さん達が挨拶に来たので

人生で初めて「アーティスト」

と呼ばれる人と名刺を交換した



その作曲家さんは

僕でも名前を知っているような

有名な人だったが

めったにテレビにも出ないし

気難しいと悪名も高かったのに

今回の美羽の新曲の依頼には

即答で引き受けたと

本人が言っていた



『あなたが主治医さんですか よろしくお願いします』



と握手を求められて

意味がわからなかったけど

せっかくだったので



『はい こちらこそ よろしくお願いします』



と返事をしておいた



『彼女の状態はどうですか?』



との質問には



『正直あまりよくありません 長時間彼女と話をするよりは

早々にきりのよいところで終わらせていただいて

翌日に再度お越しいただくなどの配慮をお願いしたいと思います』



と 主治医として当然のことを言っておいた



それから三日間連続で

社長さんと作曲家さんが美羽の病室を訪れ

曲作りの作業をしたらしい



らしいというのは

僕は当然仕事をしていたので

美羽からいろいろと聞いたのだった
< 97 / 136 >

この作品をシェア

pagetop