夢の住人
時刻はすでに24時を示そうとしていた。
さすがに彼女から
「そろそろ切るね」
と言ってきた。
ボクも素直に
「そうだね」
と言った。
「じゃ、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
ボクは彼女が電話を切るまで、受話器を耳に充てていた。
ふたりの会話は、そこで途切れた。
正直、身体はくたくたで、でも、幸せな気持ちでいっぱいだった。
3時間も彼女と会話できたのだから。
しかし、よくよく考えてみると、今日、わざと遅刻して話題にでもしようかとした事は、まるで彼女の話術にはまるかのように、喋る必要がなかった事に気づいた。
まあ、いいか・・
そんなこと。
いったい、今日は彼女に何歩近づいたのだろう。
いつものようにベッドに横たわり、ラジオをつけた。
心地好い興奮が、今度はボクを追いかけて来てくれる。
今度はいつ電話しようか?
なんてことは考えなかった。
ボクの計画ですでに決めていたから。
そう、時間は言うまでもない。
あの時間に・・。