心臓に悪い料理店
水を噴いたスティーブンにダニエルは慌ててハンカチを渡し、布きんで濡れてしまった机を拭いた。
「アルフレッドっ! お前、何でそのこと……!」
「……ジャ○ニーズニンジャは何でも知ってるんだよ……」
ニヤリと薄っすらと笑みを浮かべ、アルフレッドは厨房の方へと立ち去った。
立ち去っていくアルフレッドの後ろ姿をスティーブンは睨むように見つめた。
「この、ニンジャマニアめっ……!」
「え? スティーブン先輩、彼女がいらっしゃるんですか?」
「あ、まぁ、一応……」
頬を掻きながら、スティーブンは小さく頷いた。
「わぁ〜、彼女、いらっしゃるんですか! いいですね〜。俺、生まれてからずっといないんですよ〜」
「いつか、お前にも見つかるさ。ゆっくり探せ」
手が外れるんだから、そりゃあいないだろう、という言葉を呑み込み、スティーブンはダニエルの肩をぽんと叩いた。
自分も人のことは言えない、そう思ったのだろう。
「スティーブン先輩の彼女って、何ていう名前なんです?」
「え? あー、キャサリンっていうんだ」
照れるようにスティーブンはダニエルから視線を外して、小さく言った。
「へぇー! 今度、会わせて下さいね! スティーブン先輩の彼女のキャサリンさん!」
「機会があったらな、あははは」
明るく笑うダニエルに、渇いた笑いをしながらスティーブンは頷いた。