そのオトコ、要注意。


「あれにはさすがのあたしもヤラレたわー」なんて、何故か環奈は悔しげ。

そのときのあたしに、そんな滅多に見れない環奈の姿をからかう余裕があるはずもなく。

ただ赤く染まっているであろう顔を隠すために、へなへなと机に崩れ落ちるので精一杯だった。


「あれは…っ、あいつが!勝手に!」

「そーお?あたしには美羽が拒んでるように見えなかったなー」

あーあ、あたしだけのかわいこちゃんが、なんて仕舞いにはわざとらしげに小さくため息をつく。

「なっ…!どーいう意味よ」

すると環奈はニッコリと女のあたしでも見惚れる笑顔で

「そこがわかんないのが美羽の『あほかわいい』とこよ」

……って、それ…褒めてんのかな!?


追及しようと思った途端に「とにかく」と話を変えられてしまう。

こうなるともう無理なことはわかっているので、言葉をぐっと飲み込んだ。

「あたし達のクラスの女子は大丈夫よ」

あたしが保証する、と環奈は言い切った。


そりゃあ、いちゃもんつけられるなんてゴメンだ。
それが自分のクラスで起こるなら、尚更だ。

だけど環奈は『それはない』と言う。


…どうして。


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