忘却は、幸せの近道
「なぁ。
実依。」


初めて、先輩に名前を呼ばれた。


いつも、おいとかおまえとか名前で呼ばれたことない。


名前知らないからだと思ってたけど、違ったみたい。


てか、名前を名乗る機会がなくて、そのままにしてたから、仕方ないけど。


「なんですか、先輩?」


「俺の名前、わかってるよな?
学校にいたら、みんな、先輩なんだけど.....」


「品田 惣一先輩でしょ?」


私は、首を傾げながら言った。


「先輩いらないから、名前で呼んでよ。」


「惣一さん?」


よくわからないけど、呼んでみた。


「なんか違う。」


「惣一くん?」


「う〜ん。
それも......」


なんで、先輩が唸るわけ?


「惣くん?」



わからないけど、呼び方が気に入らないみたいだから、変えて呼んだ。


「それだ。
実依は、今度から俺をそう呼べ。」


命令?


「惣くん。」



もう一度、呼んだ。


「やべっ。
かわいい。」


そう言って、私を抱きしめた。


なんで?



さっぱり、ついていけない。
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