―百合色―
百合の腕を掴む手が、
だんだんと強くなっていく。


『いたっ…痛い!
私そんなつもりじゃないよ?先輩から話しかけてきたんだもん…』


百合は俺の方を見るのではなく、左下を見ていた。


『…あっそ。百合は俺より先輩のが好きかよ』


ようやく百合の腕を解放してあげた。


『違うよ!何でそうなるの?私は光輝が…心配だったのに…』


今にも泣き出しそうな百合を、抱きしめたくなったのが素直な気持ちだった。


でも俺は正反対の事をした。


『…俺帰る…じゃな』


俺は階段をひとつずつ下りて行った。


一度も百合の方を振り返らず、来た道を戻った。



素直に行動していれば、
俺は後悔などしていなかった。



俺は下駄箱を蹴り、
百合を一人残し去って行った。
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