続・特等席はアナタの隣。
そして、引き止める余裕もないまま、モカは帰って行った。


スカウトの男もこの険悪な空気を読み、名刺を渡すだけ渡して「じゃ!興味あったら連絡して!」とそそくさと帰った。



結局、モカの不安を取り除くどころか、ますます悪化させてしまっただけだ…。


俺もフラフラと自宅に帰り、腑抜け状態のままリビングのソファーにバタッと倒れこんだ。


モカを泣かせてしまった…。最悪だ…。

何の気力も起きねぇ…。モカに連絡する気力も…。


動けないままでいる俺に、いつの間にかリビングに入ってきた兄貴が楽しげに近付いてきた。


「和泉ちゃんおかえり〜♪…って今日はまた一段と落ちてるねー」


そう言って俺の身体をゲシゲシと蹴っている。


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