群青ノ春
それは一瞬だった。




どくん。


全身が心臓になったように響くと、耳の後ろ辺りがじんじん熱くなり周りの音が聞こえなくなった。




奈緒は目をそらす事が出来なかった。





何て事はない。
要するに一目惚れだった。




奈緒自身もその時点で恋に落ちた事は理解できた。






しかし受け入れる訳にはいかなかった。


何故なら奈緒は多く見積もっても『中の中』のレベルしか無いことを自覚していたからだ。





今まで付き合った事は二回あって、告白ってやつも何回かは受けた事はあった。





でもそんな経歴じゃ適う相手では無いことは自分が一番分かった。





一瞬で始まった恋は、一瞬で判定が下された。





まるでコメディ番組で見る頭の上のタライが不意に落ちて来たような衝撃、そして事故だった。
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