群青ノ春
何度か一緒になる授業で、彼が『恩田陽登』だという事を知り、

また奈緒より二つ年上だという事も知った。





陽登が何処に居ても目立つのは確かだが、
それ以上に奈緒は目で追っていた。






寝る前に無意識のうちには陽登の顔を思い浮かべては慌てて、


『これは憧れだ!』


『きっとあたしは恩田さんのファンなだけだ!』と言い聞かせた。





好きになってはいけないなんて決まりも何も無かったのだが、

その時の奈緒には片想いのドキドキに酔って楽しむ余裕なんて一切無かった。




―恩田さんとあたしじゃ釣り合わな過ぎるじゃん―






実際、奈緒と陽登が一緒に並んで歩いてる姿を妄想する事よりも、キレーな大人のお姉さんと歩く姿を想像する事の方が簡単だった。





そんな想像をしては胸を痛めて、
落ち込んだ。






今まで付き合った二人よりも、

高校の時に憧れた村井先輩よりも、断然好きだった。





だから分かってはいるけど認めたくなかった。



この恋に破れたら立ち直れる気がしなかったから。








しかし奈緒が『自分は陽登が好きなんだ』と認めざるを得ない出来事が起こってしまった。
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