群青ノ春
確か、昨夜は紗英子と別れた後、何度も頭でリピートしている陽登のアドレスにメールを送った。




件名 奈緒です

本文

久しぶりでした。ビックリした。陽登全然変わってなかった。

会えて嬉しかった!
またお店に遊びに行きます。





なぜか何度も消しては作り直した。

なぜか鼓動が速くなっていた。



眠りにつくまで携帯を肌身離さず持っていたけど、夜には返信が無かった。





―そっか夜は仕事してんだもん、返事来るわけないか…―



奈緒は陽登から着たメールを何度も何度も開いていた。




『電話でろよー』という事は、今朝の着信は陽登だったんだ。

別れた後番号を消してしまったから分からなかった。


メールを面倒臭がる陽登はいつも電話をしてきた。
そんなとこも変わっていないんだと思うと、奈緒はくすぐったい気持ちに包まれた。




―またメールしたら電話が来るかな…?―



そう思うのと同時に奈緒はメールを作りはじめていた。




件名 仕事中です
本文 ゴメン!電話、準備してて出れなかった〜!何かあった?






疑問文にしたのは意図的だった。
ずるい大人になったなぁと自分に感心してしまった。





しかし一日中待っても陽登からの返事は来なかった。



今日は一番最後まで残っていたけど、結局携帯は陽登からの着信を知らせる事は無く、諦めて帰る事にした。



―あたし、何ちょっと盛り上がっちゃってたんだろう…馬鹿みたい!―



久しぶりに昔の恋人に再会して、懐かしい淡い記憶に陶酔している自分に気づき、情けなくなった。
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