群青ノ春
「おっ待たせー!」
陽登が何か手に持って奈緒の元へ戻ってきた。
恐らく五分も経っていなかっただろう。
けれど奈緒にはとてつもなく長く感じた。
「何してたの?」
ちょっと不機嫌な口調になってしまった。
「は?お前、何怒ってんの?じゃぁコレやらねぇよ?」
陽登が奈緒に見せたモノは、棒状の真ん中から二つに割れるシャーベット状の氷菓子だった。
「あ!チュッチュ!」
「はぁ!?何チュッチュって!パッキンだよ!」
陽登がげらげらお腹を抱えて笑った。
「嘘ぉ?あたしの地元はチュッチュだよ!」
陽登は家にその『パッキン』があったのを思いだし、取りに帰ったのだった。
二人でベンチに座り、街並みを眺めながら食べた。
「陽登、優しくなったよねー」
「あほか、俺は昔っから優しいわ!
この間だって体の不自由なお年寄りに席譲ったしな!
それに…」
陽登の話は聞いてて楽しかった。
次から次に面白い話題をしてくれる。相手を飽きさせないのだった。
お決まりのようなありがちな台詞のやり取りや、
時にはちょっと嘘混じりな話とか。
その全てが奈緒には懐かしく、
そして新しかった。