氷柱
商店街のショ-ウィンドウに写る自分の制服姿は、どこからどう見ても日々を適当にしか生きられない不良娘の姿…。


救急救命士になりたくて、それが昔からの憧れだった。


人命救助が如何に素晴らしくて、必要か…


子供ながらにテレビで時折流れる救急救命士の映像を見ては、体中の血が騒ぐ思いがしていた。


中学で非行に走りだしたとは言えど、救命士の夢だけは捨てられなくて、受験の時なんかは琢磨の部屋に教材一式を持ち込んで、死に物狂いで勉強した。


『珠輝い、頑張れよ』


あの日、あたしの受験勉強を見て琢磨は言ったのに。


あたしが医療を志す人間だって…まがいなりにでも、夢をおってるって知ってるのに。


琢磨…何で??


「あれ?落合さんだ」


不意に名前を呼ばれて振り返ると、どこかで見た事のある女の子が立っていた。


「…誰?」


誰か分からないから訊くしかない。


「同じクラスの影仲恵理って言えば、分かる?」


影仲恵理…そんな子、居たか?


「落合さん、学校来ても勉強してるか寝てるかだけだから分からないよね」


影仲は微笑んだ。
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