氷柱
「ああ…ゴメン」


今思えば、恵理はこの時から不思議な子だったんだ。


女っぽくなくて、寄せつけずに引き付ける。


「良かったら、ちょっとお茶していかない?」


彼女の誘いを断る理由もなく、近くのマクドナルドに入った。


はた目から見たら変な組み合わせだ。


片方の影仲恵理は見るからに優等生、片方の落合珠輝は見るからに劣等生。


しかもこの頃のあたしは、学校では勉強こそ真面目にしたものの一度外へ出たら喧嘩だってしたし、単車を乗り回すような馬鹿な事もしていたから…


そこそこ名前が売れていた。


『不良』として。


「…ってかさ、声かけてきてくれた理由がよく分からない」


アイスコーヒーをすすりながら、目を合わせず呟いた。


「落合さん、面白いから」


拍子ぬけも良い所だ、面白いって一体…それは何だ?


「落合さんってさ、いっつも刃物みたいな目の光してる。あたし、それが気になってた」


恵理はあたしの目を見て言った。


「何で?」


何で?って聞かれても分からない。


「さあ…女嫌いだから。嫌いな人種に囲まれてたら、そりゃ刃物みたいになってくるわ。」


めんどくさい、とは思っても嫌じゃない。


それよりも…恵理はあたしをよく見てた。
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