氷柱
「薬のキレメになるとさ…こうやって来るんだろうな。」


千明があたしの後ろから言葉を投げ掛ける。


「何で千明、てめえも止めねえんだよ!!」


完全な八つ当たり。


それは分かってるけど、どうにもこうにも止められなかった。


「言ってんだろ!!噂だって!!こいつがマジで食ってるなんて今初めて知ったよ!!」


いくら馴れ親しんだ千明とはいえ、凄まれるとさすがに怖い。


「そこまで言うなら珠輝…てめえが止めて見ろや。琢磨の事、お前が救えや。」


そう言ってあたしに背中を向けて、千明はテレビに見入ってしまった。


こんなに怒鳴り合っているのに、琢磨には起きる気配すら感じられない。


「…起きたら…あたしに電話するように伝えて。それと…さっきはゴメン…」


カバンを持って、部屋の入り口に立ち、千明の方へは向き直らずに言った。


「気にすんなよ珠輝い。いつものことだあ」


おどけた千明の声を聞いて、あたしは部屋を出た。


真冬の風が、あたしの髪の毛を後ろになびかせる。


昔からの夢を叶えたくて、必死になって今の高校に入った事を忘れていた。
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