見えないお姫さま
乗馬場に着くとラナの言った通り馬に乗って走っているお兄様がいた。
颯爽と走るその姿は例え兄妹であろうと、美しくてつい見とれてしまう。
けれど私は決してブラコンなどではない。
嫌いではないけれど、大好きでもない。
言ってしまえば、普通。
ただの兄。
柵の外でお兄様を見ているとお兄様も私に気が付いた様で目が合った。
数メートル離れた場所から近付いて、私の目の前で手綱を引き馬を降りる。
「どうした?まだ授業あるだろ」
お兄様は私を見ながら、馬がどこかに行ってしまわない様にしっかりと手綱を握っている。
「お兄様こそ一人で乗馬の授業?」
お兄様以外誰もいない乗馬場を見渡した。
「俺はもう18だぞ。アイリみたいに授業なんてないの」
そんな事は知ってるわ。
嫌味で授業って言ったのよ。
私だって後2年でこの勉強地獄から解放されるのを楽しみにしているんだから。
「勉強がなくてもお城の公務はあるでしょう?」
お兄様の眉間に一気に皺が寄る。
きっと逃げて来たんだわ。
「終わらせて来たんだよ!」
適当に言い訳して無理矢理終わらせたんでしょ?
お兄様の執事が焦っている姿は良く見ていた。
今頃泣いてるわ。