見えないお姫さま



私は今居る場所からでも声が届くだろうと思い、恐る恐る声をかけた。

「あ、えっと…。ご機嫌いかがかしら?」


地面を向いていた彼は私の声に反応して作業を止めて、顔を上げこちらを向いた。

しかし不思議そうな顔で周りを見回して、一度首を傾げ再び作業を再開してしまった。


あら?

おかしいわね。

今彼の視界に私入ったわよね?


今度はすぐ近くまで近寄って話し掛けてみる。


「聞こえてる?」

「えっ!?」

彼は驚いた顔で私の方を向いたけれど、何故か私と視線が合う事はない。


目が見えないのかしら?

いいえ。そんな事はないはず。

だってこの美しい庭を造ったのは彼だもの。

じゃあ何故?


「どこを見ているの?」

「うわっ!」

何?何なのこの反応は!?


「……もしかしてアイリお嬢様ですか?」

焦点が合わないままの彼がそう言った。

「ええ…、そうよ」





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