lotlotlot3-血脈の果て-
その時だ。鞄の中に入れた言葉人形から、声が聞こえてきた。鞄に入っていて声がこもっているけど、アイワイさんに間違いない。
でも、とても返事をしている余裕などない。それどころか、それに気を取られ僕はバランスを崩した。そして事も在ろうに、毛の塊に身を投じてしまった。

染み込んでくる。毛穴と言う毛穴から、毛が染み込んでくる。さすが毛だ。毛穴とか相性がいいらしい。どんどん、どんどん染み込んでくる。
「痛い、痛い、痛い・・・。」
痛烈な痛み。体の中を駆けめぐる痛み。
気がつくと目の前にいた黒い毛の塊は消えていた。全部かはわからないけれど、ほとんどの毛は僕の中に収まったようだ。その証拠に掌が、腕が、ハムのようになっているのが見える。さらに目を凝らすと、中を駆け巡っている毛の様子が伺える。
「何なんだよ・・・。」
のたうち回る僕を、メルツは心配そうに見ている。
今にも破裂しそうだ。僕は張りつめた風船だ。
<助けて・・・。>
想いはそれだけだった。
そして、何とか唱えられた。
「lot。」
こんなにマヌケでも、一応僕は言術が使える。だから、唱えた。これでダメなら、僕はハジケるだけだ。
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