lotlotlot3-血脈の果て-
「そんなのやってみなきゃ、わかんないだろ。いいか、見てろよ。」
両手を挙げ、自分なりのポーズを取ってみせた。
「エフス。」
さっきのヨダセンにも負けないくらいの大きな声を出した。そして、同時におおての掌から、炎が飛び出してきた。
「うわああああ。」
はじめての事だから加減なんて出来るはずもない。炎を出したおおても、炎を浴びたヨダセンも叫び声を上げた。

王から言われた用が終わり、乳母は廊下を歩いていた。たまにケンカこそするものの、特に二人が魔力に目覚めた様子もない。つまり、それほど手がかからないと思っていた乳母は急ぐ事もないと思い、ゆっくりと中庭を眺めながら歩いていた。その時、声が聞こえた。叫び声。ヨダセンとおおての声だ。乳母はスカートの裾を持ち上げ、廊下を走り始めた。
「ヨダセン様、おおて様。」
大きな扉を開け、乳母は叫んだ。目の前には信じられない光景が広がっていた。ヨダセンが炎で焼かれ、その炎をおおてが出しているのだ。
「お止め下さい。」
おおての元に走り、その炎を止めるように言う。
「け、けまさん・・・。ダメだよ・・・。止まらないんだよ・・・。」
泣きながら訴える。
「そんな・・・。心を静めて下さい。ゆっくり、ゆっくり。呼吸を整えて・・・。」
「わ、わかった。」
言われたとおり、ゆっくりと深呼吸をする。すると、気持ちが落ち着いてきたせいなのか、炎が徐々に小さくなっていった。
「ご、ごめん・・・。」
涙は床の絨毯を濡らす。それも半端な量ではなかった。それくらいに、おおては動揺していた。けまも同じように動揺していた。もしこれが王子達の前でなかったら、おろおろとするだけで何も出来なかったはずだ。しかし、今はそうもいかない。次に倒れているヨダセンの元に駆け寄った。
「ヨダセン様。」
抱え上げるが返事がない。それも当然だった。ヨダセンの顔の右半分は焼けただれている。髪の毛の燃えた臭いが鼻を突く。
「ヨ、ヨダセン様。」
素人のけまが診ても、その症状が芳しくないのは明らかだ。けまは叫んだ。
「だ、誰か。誰かぁ。」
幸い大きな扉は開けっ放しだった。けまの大声は廊下を抜け、何人かの兵士達の元にも届いた。
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