ちぇんじ☆
 大きな光は私が近付いても離れていくことは無かった。
 一歩一歩――確実に光に近付く。
 大きな光を少し遮っている、周囲の木よりも少しだけ大きな木を通り過ぎた時――。

――いきなり視界が開けた!

 夕陽に照らされて、真っ赤に染まる大きな花畑。

――ここは……ひょっとして『あの世』?

 思わずそう勘違いしてしまうほどに幻想的な風景だった。
 あんなに木ばかりが生い茂る山の中に、こんな場所があるなんて――。

 先ほどまで私を先導するように動いていた『灯り』のことをひと時忘れるほど景色に見とれてしまう。
 体の疲れも忘れ、錯乱しかけていた気持ちも嘘のように穏やかになっていく――。

 何十秒か景色に見とれただろうか?
 ふいに自分のおかれている状況を思い出した。
 視界の開けた場所に出てきたとはいえ――ここはどこなのだろう?

 少しでも自分のいる位置を確認できる目印は無いかと周囲を見渡す。
 一面に広がる花畑、視界の端からぐるっと周りを見回していた――。

――夕陽が見えるところで視線が止まる。

 私の視界の中に映る夕陽。
 その夕陽の中に――人影が見えた。

 その人影――間違えない、間違えるもんか!
 私はその場から人影に向かって走り出していた。
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