ちぇんじ☆
 三人が三人とも緊張で何の言葉も発することも無いままに目的地へ到着。
 そのままラブホテルのフロントに向かい部屋を選択する。

 選んだ部屋は――これまたいつぞやの時を同じ部屋。
 例の全面鏡張りの部屋だ。
 誰からも異論も出ることは無く、そのまま部屋に向かう。

 周囲から見ればおかしいくらいに緊張感に満ち溢れたカップルに見えるだろう。

 部屋に着くなり真里が、

「シャワー、先に浴びてきなよ」

 と、私を促す。
 先に真里が入ってくれれば良いのにと思いつつもいまだに続く緊張のおかげで上手く反論できない。
 言われるままにシャワーを浴びに行く。

 お風呂場にまで隼人くんが付いて来るワケもなく。
 一人きりでシャワーを浴びる。

 シャワーを浴びながら……浴室の鏡を見た。
 そこに映るのは不安そうな顔をした私――『隼人』くんの顔で不安そうな顔をしている私だった。

――これで最後になるんだ……。

 鏡に映る隼人くんの顔を指でツーっとなぞる。
 指が通った形に水滴が残る。
 鏡の中の私の顔は――まるで涙を流したような表情になった。

――代わりに……今は泣けない私の代わりに泣いてね。

 鏡に映る自分に語りかける。
 もう、泣いてなんかはいられない。
 すでに覚悟は決めた。
 自分が消えるための準備も全て終わった。

 後は――『元に戻る方法』を実行するだけなのだ。

 もう一度、鏡に映る顔を見てみる。
 やはりそこに映るのは――不安げな隼人くんの顔だ。

――本当の私の顔は……今どんな表情をしているのだろう。

 この体の中にある私の『魂』。
 その顔をもう一度見てみたかったけど……それもすでに叶わぬ願いだ。

 シャワーを浴び終えて、浴室のドアを開ける。

――とうとう、私に『最後の瞬間』が訪れようとしている。
< 415 / 449 >

この作品をシェア

pagetop