愛の雫
陽子さんの言葉に結んだままの唇がほんの少しだけ緩み、その隙間からため息が漏れた。


陽子さん(コノヒト)は、いつも馬鹿みたいな事ばかり言う。


あたしのご機嫌取りのつもりなのか、それとも恩でも売りたいのか…。


どちらにしても、媚(コビ)を売るようにしか見えない笑顔を前にして、反吐(ヘド)が出そうになった。


このまま黙っていたい。


だけど…


目障りな笑顔で馴れ馴れしく話し掛けられた事に苛立っていたあたしは、とうとう堪え切れずに口を開いてしまった。


< 123 / 830 >

この作品をシェア

pagetop