愛の雫
「お邪魔します……」


凪兄に渡された鍵で玄関のドアを開けて、家の中に入った。


まだ誰も帰って来ていないのか、視界に入る場所は全て真っ暗だった。


電気が一つも点いていない他人の家に一人でいるのは、何となく心細くなってしまう。


そんな気持ちを掻き消す為に手当たり次第に電気を点け、さっさとリビングに行った。


見慣れた部屋のあちこちに飾られている家族写真が、胸の奥をほんの少しだけ締め付ける。


小さなため息が、静かなリビングに零れ落ちた。


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