愛の雫
何て綺麗なんだろ……


失礼な事をしたんだと理解しながらも、乃依さんの儚げな笑顔から目が離せない。


彼女の表情に見入っていると、突然コール音が響いた。


ハッとして、我に返る。


乃依さんは、すかさず受話器を取った。


「はい、フロントです」


何事も無かったように明るい声で対応する彼女が、さっきまでとはまるで別人みたいに見える。


あたしは、いつも通りテキパキと対応する乃依さんが受話器を置くまで、彼女から目を離す事が出来なかった。


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