愛の雫
程なくしてから店を後にし、微かにオレンジ色に染まる空の下を朋子と並んで歩いた。


お互いに特に何も話さない空間は何だか微妙な空気を纏っていて、どこかぎこちない。


だけど、不思議とこの時間が嫌だと感じる事は無かった。


「あのさ、朋子……」


やっと意を決したあたしは、行き交う車の雑音に掻き消されそうな声で言葉を零した。


「さっきは……」


続けてそこまで言った後、朋子に真っ直ぐな視線をぶつけられた事に戸惑って、何となく口を噤んでしまった。


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