愛の雫
歩き出した早苗に視線を送っていたけど、程なくしてあたしも足を踏み出した。


こんな微妙な雰囲気のまま彼女と別れたのは、きっと初めての事だったと思う。


あたし達は今までに喧嘩をした事が無いし、こんな気まずさを感じた事も一度も無かった。


さっきまで感じていた不安の上に、絵里香との電話でのやり取りで引っ掛かった事や、早苗との間に出来た小さな歪(ヒズ)みが伸し掛って来る。


不穏(フオン)な雰囲気を纏った風が、あたしの不安を曝(サラ)け出させるかのように吹いていた――…。


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