愛の雫
「ちょっ、希咲!こんな時間にどこ行くの?」


凪兄は、逃げ出そうとしたあたしの手をすかさず掴んだ。


「友達のとこ……」


咄嗟についた嘘では、きっと彼を騙す事なんて出来ない。


だけど…


あたしは、嘘をついてでもあの家には帰りたくなかった。


「今から友達のとこに行くなんて、迷惑だろ?」


「別に大丈夫だもん!」


「ダメ。ほら、一緒に帰るぞ」


凪兄は諭すように言うと、掴んだままのあたしの手を引っ張って歩き出した。


< 9 / 830 >

この作品をシェア

pagetop