【一話完結×短編集】ビター&スィート

深呼吸をして


勇気を振り絞ると

図書室の扉に手をかけた





いつもの席で眠る日野崎くん





どうしよう…




そう思いながら

いつもの席に荷物を置くと

本を選ぶ振りをする




選ぶ振りをしながら


本の背表紙すら見れない




ドキドキがとまらない…




緊張しすぎて

心臓がとまりそう





自分の席の近くの本を取り

席に座るしかなくて…






どうしたらいいのかわからない






そう思った瞬間


『バレー部、部長

至急、職員室、顧問まで』




校内放送が鳴り響き

無意識に体がビクついた




恐る恐る向けた視線の先には


ゆっくりと上半身を起こした

日野崎くん




一瞬ボーっと前を向いたようだけど

すぐに外に視線を向け

空を眺めているのがわかる





今…しかない…よね




今にも飛び出そうな心臓を

ギューッと握るように

胸の前で手を握り締め

本棚に本を戻そうと立ち上がった




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