はつおもい


お昼休み。

私と梨沙はひとつの机に
お互いのお弁当を広げている。


「みくってば、ぼ~っとしちゃって!
 いつも何考えてるの?」

音楽祭のパート決めの一件から
梨沙はくすくす笑ってばかりいた。

「う~ん…。
 何もね、考えてないの」

そう、私の考えることって
本当にたいしたことないんだもん。

窓から見える雲の形とか
小鳥が飛んでいった行方とか
道端に咲いていたお花だとか。

そんな些細なことばかり。
だけど、そんな小さなことを考える時間
私は好きなんだ。

大きな欲を持たない毎日は平和で。
小さな欲なら…
例えばお弁当にはいってる
この、私の好きなたまご焼き。
それだけで満たされるの。


それを梨沙に話してみたら
一瞬だけぽかんとした表情になったけど
すぐに彼女らしい明るい笑顔を見せた。

「あははっ、みくは幸せなんだね。
 いいなあ~…。
 私も、そんな風になりたいな……」


ぽつり。
こぼしてしまったみたいに
梨沙はほんの僅かに遠い目を向けた。

それを見落とさなかった私は
ぽむっと頭に浮かんだ疑問を
梨沙に投げかけてみる。


「梨沙、なにか悩みごと??」

「えっ?あ、…う~~













 ……みく、好きな人いる?」

ちょっと言いにくそうにして
梨沙は、私にだけ聞こえるような
小さな声で言った。

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