それでも君と、はじめての恋を
ダメだ、この人。
ほんとに無自覚で言ってるんだ。
あたしが何で喜んでるのか、全く分かってない。
「……チョコ欲しい?」
「……」
「ねえ、欲しい?」
固まるモモの顔を覗くように見上げると、モモはスイ~ッと目を逸らす。
今日が何の日か、分かってるよね? むしろ、今気付いたよね?
ついでに、前に電車であたしが何でチョコのこと聞いたかも、分かったよね?
めげずに何度も逸らされる瞳を追うと、突然額を後ろへと押された。
「分かったから……っ」
逆にモモの手のひらを額で押し返すと、そう言うモモ。
「欲……しい、かも」
「かも!?」
かもって何!
怒ろうと思ったのに、モモの顔がまた赤くなるから、そんな気持ちはどこかへ行ってしまった。
くそ……可愛すぎる。
「はい」
鞄の中からモモの髪と同じピンク色の箱を差し出すと、黙って受け取るモモ。
あたしの手から離れていくバレンタインの本命チョコは、モモの手の中に渡った。