それでも君と、はじめての恋を




「お、渉ー。旦那のお迎えー?」

「旦那って、はは! 迎え行くとこだよ」


放課後、葵と純と別れてベランダを突っ切っていると、別のクラスの友達が声を掛けてくる。


携帯から目を離して立ち止まると、あたしと同じような濃いメイクをした友達が目を細めた。


「今度さぁ、誰か紹介してよ」

「いいよー。年上? タメ?」

「お兄さんの友達ー」

「おっけ。ドS系ね」


分かってる~!とお互い笑っていると、もうひとりいた子があたしの名前を呼ぶ。


「渉ちゃんてさぁ、あの桃井 寶と付き合ってるんでしょ?」

「うん。まだ1週間だけどね」

「どうなのどうなのっ? 実はデレるキャラとか!?」


興味津々って感じの子に、あたしは少し考えてからニッと歯を見せた。


「あのままだよ」

「っえー! マジ? 怖くないの? さすがなんだけど!」


あたしの“まま”と、周りの“まま”の差があり過ぎることは分かってる。


でもそれをわざわざ教えるほど、あたしはデキてないわけで。
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