それでも君と、はじめての恋を
*
「お、渉ー。旦那のお迎えー?」
「旦那って、はは! 迎え行くとこだよ」
放課後、葵と純と別れてベランダを突っ切っていると、別のクラスの友達が声を掛けてくる。
携帯から目を離して立ち止まると、あたしと同じような濃いメイクをした友達が目を細めた。
「今度さぁ、誰か紹介してよ」
「いいよー。年上? タメ?」
「お兄さんの友達ー」
「おっけ。ドS系ね」
分かってる~!とお互い笑っていると、もうひとりいた子があたしの名前を呼ぶ。
「渉ちゃんてさぁ、あの桃井 寶と付き合ってるんでしょ?」
「うん。まだ1週間だけどね」
「どうなのどうなのっ? 実はデレるキャラとか!?」
興味津々って感じの子に、あたしは少し考えてからニッと歯を見せた。
「あのままだよ」
「っえー! マジ? 怖くないの? さすがなんだけど!」
あたしの“まま”と、周りの“まま”の差があり過ぎることは分かってる。
でもそれをわざわざ教えるほど、あたしはデキてないわけで。