それでも君と、はじめての恋を
「まあアレ、惚れた方が負け? めちゃくちゃ好きだからさー」
「えー。何かいいね、そういうの」
「怖いって言われてる彼氏を堂々と好きって言える渉が怖いって」
「はぁ? 失礼なんですけどっ」
「「でも幸せそー」」と声を揃えて言う友達に、あたしは満面の笑顔を返して歩き出す。
「まーね! んじゃ、夜メールするね!」
手を振り返して、あたしはホクホクと胸を温かくしながら1組へと向かった。
「モーモッ」
帰りのホームルームが終わったのを確認して、長い爪で窓をカツカツと叩くと気付いたモモが窓を開ける。
「帰ろー……って、どしたの?」
モモはあたしを見下ろして、何か言いたげな表情になる。「ん?」と尋ねると、モモは窓から軽く身を乗り出してあたしが歩いてきたベランダを覗いた。
「何で廊下から来ないかな……」
「だってモモ、ベランダ側の席じゃん」
「……」
意味が分からないって顔をするモモにあたしも首を捻っていると、「桃井」と呼ぶ純でも葵でもない声。
見ると、モモの後ろの席に座る男子が教室の前を指差していた。