それでも君と、はじめての恋を


「また桃井のこと考えてる」


掛けられた声に前を見れば、葵がテーブルに肘をついてあたしを見ていた。


「なんだなんだ渉、彼氏でも探してんの?」

「ほんっと好きなんだからー!」


隣に座っていた友達にドンッと体当たりされて、その力の強さに少しよろけながらも「やめてよ」と笑ってしまう。


「でも実際さー。彼氏と同じクラスってどうなの?」

「どうって、……いつでも会えるのは嬉しいけど」

「うわー! 腹立つーっ!」


アハハとみんなで笑いながら、お菓子をつまむ様子はまるで女子会みたい。


あたし達はなんだってこう、いつどこでだって恋愛の話になるんだろう。昨晩、部屋で散々語りあったはずなのに。


「そういや渉と桃井寶ってさぁ、4月に昇降口の前で喧嘩してたよね」

「ああ! 渉がバカッ!って叫んでたってやつっしょ!?」


うぉおおおおおおお!!! それ! あれ! 記念日の折り紙事件!


「け、喧嘩っていうか……!」

「知ってる知ってる。桃井寶がすっごい不機嫌な顔して渉が泣きそうな顔してたって! でも結局すぐ仲直りしてー、桃井寶がこう、手を差し出してさぁ。さっさと帰るぞ的な?」

「そうそう! そんで乱暴に手ぇ引かれて帰ったんでしょー?」


誰!? 何か話聞いてるとモモがすごい偉そうだけど、そんな風に見えてた!?


「プッ……ふ、くくっ……!」

「葵さん、笑い漏れてます」


なんとか堪えようとしてくれてるみたいだけど、どう見たって笑ってる葵に「何なに?」と友達は興味津々。
< 289 / 490 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop