それでも君と、はじめての恋を
「キスもまだだったとは……」
感心してるのか物珍しいのか、「へー」と言いながらあたしを見てくるみんなに口を尖らせる。
「モモと付き合ってるだけで幸せだもん」
ああしたい、こうしたいって望むものはあるけど、今のままでも充分幸せで。
手を繋ぎたいと思ったようにキスもしたいって思うかもしれないけど、しないことに不満を持ってるわけでもない。
まあぶっちゃけると、付き合ったばかりの頃に妄想で立てた予定では今頃チューは済んでるはずだったけどね!
それどころじゃなかったっていうか、そこまで到達できるレベルにいないというか、現実はそう甘くない。
ていうかモモが甘くない。色んな意味で攻略できない。
「あたしが浮かれ過ぎなだけデスカ……」
もっとこう、攻めればいいのかな。でも別に、今何か不満に思ってるわけでもないしなぁ……。
「まあ、今時そんな浮かれ続けるのもめずらしいよねー」
「そうかなぁ。アタシ、初彼の時は1ヵ月チューしなかったよ」
「うちは大体いつも付き合って1週間もしない内に、かな」
次々と経験談を語る友達は、あたしにとって教科書とか参考書になりそうだ。
「葵は?」
「あたし? 七尋とは告白されてOKして、家まで送ってもらった時だったと思う」
「ぎゃー! それあたしの理想!」
「理想って! まあ、あるよねー。こうだったらいいなあっていう……妄想」
楽しげに話すみんなの顔を見てると飽きないけれど、次の瞬間あたしに向けられる瞳はなんとも言えない。
哀れむのやめてほしいんですけど……。