それでも君と、はじめての恋を


「ははっ! あれは、兄貴とのデート資金狙いかなー」

「うーん。七尋くん絡みであるのは間違いないね。うちらも早く行こう!」


すでに純が数名の女子に声をかけてる最中、あたしたちは来た道を引き返そうと足を進める。と、モモがたくさんの紙を持ってこちらへやってきた。


「あ、大丈夫だった……よなー。さすが桃井」


笑う森くんがモモから受け取ったのは、どうやらクラスの男子が押してもらうべきだったハンコと到着時刻が記載された紙の山。


「全部押してもらったの!?」


走り出しながら驚くあたしに、森くんは相変わらず笑う。


「足遅いやつもいるし、あの行列で時間食われるのも嫌だよなーって。な?」


森くんの説明に頷くモモに、そういうことかと思う。


実は景品があった、と情報が回り出した時点でタイムラグが発生してるんだから、何がズルイとかもう関係ないでしょ。と笑う森くんは意外と腹黒いというか賢いというか。


「俺テレビ欲しいんだよなーっ」

「あたし商品券だなー……モモは?」

「学食のタダ券」


走りながらもサラッと答えたモモといい、結構みんな本気……!


気付けばマラソン大会かと突っ込みたくなるほど、前も後ろも走ってる生徒だらけになっていた。


商品券、欲しいなぁ……。

今月ちょっとピンチだし、もちろん商品券なんて換金してモモとのデート代に使いたいわけだけど。


燃える!
本当に貰えるならこれは相当燃える!!


「渉」

「はい!?」


頑張ってモモの隣を走っていたあたしは勢い良く顔を上げて、よこしまな考えが口に出てたかと焦る――けど、そんな焦りは不要だったみたい。


「渉たちの紙って……」

「ああ、葵が全部持ってった! すごい勢いで走って……っ!?」


突然モモがジャージの上を脱いで、驚きのあまり息を飲む。


って、Tシャツ着てるしね! そうですよね!
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