それでも君と、はじめての恋を


「何もないのかなぁ……」

「……どうだろ」


眉を下げるとモモはそう言って、あたしの気持ちはマイナスに向かってしまい目を伏せた。


……モモがこういう行事で喜ぶ姿、見たかったのに。


トン、とモモの腕に額をくっ付けると、わずかにモモが体を揺らしたのが分かった。


「渉が落ち込んでるぅ~」

「桃井は完全無視だけどね」


純と葵の言葉を聞いてもあたしはモモから離れることはなくて、その間3組の安部ちゃんに対するブーイングも止まない。


するとマイク越しに深く息を吸うのが聞こえて、いつもなら「うるせえ!」くらい言うのに今日の安部ちゃんは盛大な溜め息をついた。


「ほんっとお前らは分かってないな。残ってる景品が何か言ってみろ」

「……」


一瞬の静寂はすぐにざわめきに変わり、あたしが目を見開いたように3組の生徒は疑いながらも言葉を発し出した。


「え……最新ゲーム機?」
「……テレビ?」
「商品券も残ってるじゃん、ね?」


まだザワザワとしてる雰囲気の中で、安部ちゃんは「喜べ」と得意げな声で言う。


「本当は学食のタダ券が3組の景品だったわけだが、極秘事項をバラした挙句その担任が受け持つ4組が優勝ってどうよ。ってことで景品をトレードしてもらったってわけだ!」


ハッハー!と声高らかに笑う安部ちゃんに、4組のブーイングと3組からのウォオオオ!という歓喜の声。
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