それでも君と、はじめての恋を
「しかも、だ。何と全員分ある」
その言葉に勢い良く顔を上げると寄り掛かられていたモモは肩を揺らして、瞳にあたしを映した。
「全員分だって……っ!」
そう言うと、見開いていた目であたしを見つめていたモモは暫くして目を細める。
「良かったね」
あたしの顔を覗くように少し首を傾げたモモに、閉じられた唇の端が緩々とだらしなく上がっていった。
「やったぁああああ!!」
「――!?」
両手を広げてモモに抱き付くと、大きな体が後ろへ仰け反る。
やった! やった!
ナイス安部ちゃん! まさかそんな、全員分あるなんて信じられない! 夢みたい!
「モモは!? 嬉しい!?」
バッと顔を上げると、モモはぎこちなく頷いてみせる。
だよね! 嬉しいよね!
周りでは安部ちゃんコールが始まっていて、ステージでは「よせよ」なんて言いながら照れ臭そうにしてる安部ちゃんがいた。
「とりあえずまぁ、そういうことで。3組の景品はクラス全員分のくじ引き券でしたーっ!」
安部ちゃんが掲げた手には、封筒のようなものが握り締められている。
「感謝しろよお前ら。生徒想いの優しい担任、安部先生つまり俺にな」
「…………」
「……は?」
「くじ引き……?」
完全に冷え切った空気の中で一際早く立ち上がったのは、純だった。