それでも君と、はじめての恋を
*
「「夜はこれからだよねーっ!」」
ウォークラリーの表彰式を含めた夕食の時間は終わり、お風呂を済ませて部屋に戻ると同室のクラスメイトが笑顔を見せる。
髪を乾かしていたあたしは、目の前まで詰め寄ってきた友達に瞬きを繰り返した。
「何、何か楽しいことでもあるの?」
ドライヤーのスイッチを切って尋ねると、それはもちろんと言うように瞳を細める。
それと同時に部屋のドアがノックされ、ひとりの友達が返事をすると「お邪魔しまーっす!」と複数の明るい声が突き抜けた。
「お疲れー! これみんなで分けよー」
「安部ちゃんにジュース買ってもらったからさっ」
ドタバタと部屋へと入ってくるのは1年生の時も同じクラスだった子たちで、女子が12人集まった部屋は一気に騒がしくなる。
テーブルに置かれた缶ジュースやお茶を見る限り、これからまた女子会なるものが開かれそうだなと思った。
その予想は的中で、飲み物やお菓子、携帯を片手に色んな会話が飛び交う。
主に恋バナで占められているあたり、あたし達は自分の恋愛も誰かの恋愛も話したくて聞きたくてしょうがないらしい。
「てかこの子! さっき4組の奴に呼び出されてんの!」
「ホント!?」
「告られた!?」
すぐ盛り上がるあたし達に、男子に呼び出されたらしい友達は恥ずかしそうに「メアド聞かれただけ!」と否定する。
「好きな人いないよね? いいじゃん、どんな人だったの?」
葵が聞けば、呼び出された時に一緒にいた子が先に説明を始めた。
興味津々のあたし達は冷やかしたり、興奮で叫んだりと忙しい。
12人中5人は彼氏持ちで、4人は片思い中。残りの3人は彼氏と別れてから恋愛してない子たち。
同級生に片思い中の子には今告白しに行け、とか。気になる人がいるならメアド聞きに行こう、とか。
当事者を煽って話を進めてしまうのはあたし達の悪いくせで、だけど応援したくて止まらない会話の数々は楽しい以外の気持ちは当てはまらなかった。