それでも君と、はじめての恋を


「あ、男子お風呂上がったって」

「ホント? じゃあそろそろかなー」


話し続けて1時間近く経った頃、そんな友達の会話を聞きながらふと葵の携帯が点滅したのが目に入る。


そのまま携帯を開いた葵を見ていると、七尋くんかなと思った予想は外れた。


眉を寄せた葵はあたしと目を合わせて「弟から」と、告げる。


「……森くん? 何で?」


葵は一人っ子だから、弟と言えば彼氏である七尋くんの弟、森くんのことだ。


「ていうかメアド交換してたっけ?」

「してない。純に聞いたみたい。今部屋にいるかって」


何だろうと言うような表情で返信する葵を見ながら、本当に何の用だろうと思う。


――まさか告白!?

……と、すぐ恋愛に繋げたがる思考を自分でもみ消した。


ないない。せいぜい七尋くんのことで話があるっていうのが妥当だよね。

でも何で今? 急用?


「ねーねーっ! 今から男子の部屋遊び行かないっ?」


あたし同様、葵も携帯から目を離して突然の提案をしてきた声の主に顔を向ける。


「えー何で?」と、聞いたのは同室のクラスメイト。


「楽しそうじゃん!」


どうやら男子の部屋に行こうと計画を立てていたのは、この部屋に遊びに来た6人の女子たちだったらしい。


「えー、どうする?」
「何で行くの?」


そう言いながらも声に楽しさを含ませる友達を見ていると、ひとりの子があたしにグッと体を寄せて耳打ちをしてきた。


何と、ウチのクラスの男子がこの部屋にいる現在フリーの友達に告白をしたいらしく、男子たちと計画してふたりきりにさせたいとのこと。


とりあえずメンバーはほぼ全員、元1年7組だとか。
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