それでも君と、はじめての恋を


「――ふっ、く……あははっ! モモって……!」


あたしの好奇心でこうなってしまったことを知らないモモは怪訝そうに眉を寄せて、事の顛末を理解しようとする。


だけどホントのことは教えてあげない。


「今、モモの家での姿を見た気分」


クックッと笑いを噛み殺しながら言うと、モモはあたしの手を綺麗にしてくれた布巾をテーブルに置く。


「あたしのこと、湊ちゃんみたいだと思ったでしょ」


だから触れることにためらいを感じないどころか、慣れてるとすら感じるのかもしれない。


「モモって面倒見いいんだね」

「……何、急に」

「別に?」


おどけたように首を傾げるとモモは不満そうにしながらも口を閉じて、それ以上突っ込んでくることはなかった。


湊ちゃんがいるから、モモは料理が出来て心配性で面倒見がいい。


だからきっとこんな無愛想なお兄ちゃんでも、湊ちゃんはモモに懐いてるのかもしれないなあ……。

うん、分からなくもない。

小学1年生の湊ちゃんに共感していいのか定かではないけど、また新発見が出来たから純たちには感謝しようと思う。



「――あ。そういえば、何でモモだけ残されたの? あたしもだけど」


森くんと葵の会話を聞いた限りでは、まるでふたりきりにさせようとした感じだった。


「……見周りがどうとか」

「ああ、そっか。純もそんなこと言ってたね」


つまり先生が見周りにきた時のために置いてかれたわけか。


もしかしたら真っ先に怒られる損な役回りをさせられてるのかもしれない。


「見周りに来るなら、今日も安部ちゃんがいいなあ」

「何で」

「怒っても怖くないから」


テーブルに両肘をついて、手で顔を支えながら言えばモモが微かに笑った気配がした。
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