それでも君と、はじめての恋を
テレビ台の端に置いてあった時計を見れば、時刻は夜8時前。
就寝時間は9時半だから、先生たちが見周りを始めるのは10時前後のはず。
……告白するのに、どのくらい時間掛かるんだろ。
モモの横顔を盗み見ながら、あたしはバレンタインの日に見た窓ガラスを思い出す。
クラスメイトの告白現場は見たかったけど、見れない代わりにモモといられるなら別にいいかと思う自分がいた。
――しかし、アレだ。
緊張、するよね。
チッ、チッ、と先程見た時計は変わらず秒針を進めてるのに、まだ5分も経ってない。
今考えるべきことは、この部屋が殺風景すぎるということだったりする。
一応テレビはあるけど100円を入れて1時間しか見れないという、ナメてんのか!と昨日葵と怒りをぶつけたばかりの機能が備わっていた。
……ど、どうしよう。
休み時間でも帰り道でもデートでもない初体験すぎるこの状況……!
ない頭を必死に振りしぼってピンと浮かんだ案に、テーブルの下にあった自分の鞄へと手を伸ばした。
ケースにも入れず剥き出しの状態で鞄の上に置いていたのは、濃いピンク色のデジカメ。
「……」
ハイ、チーズ! とか言ったところでモモは撮らせてくれるのかと、デジカメに触れてから思う。
そもそもあたしがモモを撮る時っていっつも、不意打ちじゃないっけ?
……ダメだ。この至近距離じゃ、ピントを合わせてシャッターを押すまでに顔を背けられる確率が高い。
いや横顔とかでもいいけど、どうせなら真正面からモモの浴衣姿を激写したいわけで……。
「「……」」
テーブルの下に手を突っ込んだままの状態から動けず、モモに視線を移せばこの人何してんだろうって顔をしてあたしを見ていた。