それでも君と、はじめての恋を
「湊ちゃんに。旅館のお土産屋さんで買ったやつだけど、可愛かったから」
「……キーホルダー」
「え! 何で分かるの!?」
薄い木目の紙袋は当たり前に中身が見えないのに、モモは不思議と言い当てる。
「1個だけ、渉っぽいのが売ってた」
サラリとそう言ったモモは「ありがと」と付け足して、更に「喜ぶ」とお兄ちゃんの顔を見せた。
渉っぽいって……ハズれてたらどうするんだろ。
中身は確かにキーホルダーで、赤やピンクのストーンでかたどられたハートの他に白いレースのリボンなんかが付いてるキラキラしたものなんだけど。
数種類あったキーホルダーの中で唯一好みだった。
……何だろう、あたしってキラキラしたものが好きっていうか……デコ盛り!ってイメージなのかな。
無意識に耳朶のピアスに触れていたあたしは、モモの視線がピアスに向けられていたことに気付くのが遅れてしまった。
「……あ。付けてるよ、ピアス」
ほら、と髪を耳に掛ければモモはフイと視線を逸らす。
出たよお得意の無反応。
「嬉しいくせに」
「……」
「……」
――あれ?
今、あたし、口に出した……?
「……心の声出てた?」
「出てない」
「嘘っ! 出てた! 絶対言ったよ!」
出てないと即答したモモに詰め寄っても、顔を背けられるだけ。
ムッと口をへの字に曲げても眉を寄せても、モモは変わらず口を閉ざしたまま無心にデジカメの画面を見てる。
真っ暗な画面見てて楽しいんデスカ。
「もういっそのこと嬉しいって言ってよ!」
「何のことか」
「分からないって!? ピアスだよ! モモが2ヵ月記念日に湊ちゃんにハメられてプレゼントすることになっちゃったピアスを今まさに付けて――」
「……分かったから」
ストップ、と言うようにあたしの眼前へ伸ばされた手。
手を引っ込めたモモは首筋を掻いてから、その瞳にあたしを捉える。
――あ。
薄い唇が開き掛けた時、しまった……!と思ったあたしは急いで両耳を塞いだ。