現実RPG2
「俺の熱演も、最高だったろ。完璧な記憶喪失を装った。人間というのは、不測の事態で必ずボロが出る。だから、心から記憶喪失になりきった。戦闘に恐怖し、怯え、震えた」


「おぇっ…おぇえっ…」


「こうするのには、もう一つ、理由があった。ルカちゃんだ」


「ルカ……?」


「おかしいと思わないか。たった7歳のガキが、俺とお前が二人で戦っていい勝負だ」


「まさか……」


「そうだ。ルカちゃんも、マーダーほどではないが、読心術がある。マーダーの娘なんだから、遺伝していても何の不思議もない。だから、心から芝居する必要があった」


「何で……こんなことを……」


「裏切り者を始末するため」


「裏切り者……?」


「そんなことも忘れたか。お前ら一家は、逃げ出したんだ。俺たち魔法戦士は、兵隊だ。不良品は、始末するのみ」


コイツの正体が、今、わかった。


「お前は……」


「そうだ。俺は、組織の人間。そしてこのゲームは、お前ら一家を壊滅させるためのゲームだ」


「あぁ……あああぁ……」


「妹は、捕らわれの母のため。母は、捕らわれの妹のため。お前と親父は、家族のため。そして親父は、妹に殺された。妹と母は、お前に殺された。なかなかのシナリオだったろ?ルカちゃんは、泣けたね。お前と母を助ける為に、実の父親を切るんだからな」


ルカ……一体どれほど苦しんだんだ。


「うああぁああぁああああ!」


ルイは人間とは思えない表情で叫ぶと、拓馬に剣を構えた。


「許さねぇ!死ね!」


「スターライト」


拓馬の魔法は、ルイの胸部を貫いた。ルイはバタリと倒れると、動かなくなった。
< 128 / 129 >

この作品をシェア

pagetop