現実RPG2
「そうだ、それだ!くれ!」


歓喜の声で両手を差し出す拓馬。


水でこんなにテンションが上がるのは、初めてだ。


砂漠で遭難して、オアシスを見つけた人の気持ちがわかる。


決して言い過ぎではない。現状で水分は、体力に繋がる。つまり、命に繋がる!


「1万円になります」


「……は?」


思わず声が漏れた。店員が出したのは、500ミリリットルの水が入ったペットボトルだ。それが1万円?ふざけんな……


「バカヤロー、足元見るのもいい加減にしろ!高くてもせいぜい300円だろ!」


「1万円になります」


「くっ……」


聞く耳もたない。何を言っても無駄……


どうしよう。違うコンビニに行ったら、値段が変わるかもしれない……


いや、今、水が欲しい。飲まないと、走れない。


くそ。こんなことなら、体を鍛えておくべきだった……怠け癖が完璧についてる。飲み物も我慢できないなんて……情けねぇ。


しぶしぶ財布を広げ、1万円を乱暴に置く拓馬。


現金を置くと同時に、ペットボトルを勢いよくつかみ、蓋を開けると一気に飲み干した。


ゴク、ゴク……


うわぁ、やべぇ。五臓六腑に染み渡るって、このことを言うのか。


内蔵から指先まで、水分が補給されていく感じ。


こんなに水が美味いと思ったことはなかった。
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