現実RPG2
だが、拓馬一人の力で何日も生きられるわけがない。


一日に、何体ものモンスターと遭遇するはずだ。


武器も無く、魔法も無い拓馬に、戦う術はない。


ソルジャーはおろか、ボーンナイトにすら出遭うと殺されるだろう。


たとえ辛うじて逃げられたとしても、到底無傷で済むはずがない。


拓馬の思考も、おそらくそこに行き着くはずだ。


だとしたら、勝負は早めに決めに来る。


今日か明日にでも、攻撃を仕掛けに来るか……?


いや、わからない。その辺のモンスターにすら勝てないのに、俺に向かってくるだろうか。


ある程度、勝算が立たないと犬死だ。


一体どう考える……拓馬……?


そんなことを考えているとき、ルイの腕時計が音を立てた。


ギギギギギ……


「え……」


ルイから絶望の声が漏れる。


これは、ルカが接近してきたわけではない。


拓馬が、また魔法を使った音だ。


「畜生!」


何で……何で!魔法は使えないと思ってるんじゃねぇのかよ!


マズイ、どういうことだ……!


そのとき、再び腕時計が音を立てた。


ギギギギギ……


また。


また使いやがった。


気づかれた。


魔法は、充電なんかしなくてもいいと言う真実に。


拓馬の方から向かってくるなど、悠長なことを言っている場合ではなくなった。


ルイは宛てもなく、再び走り出した。
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