現実RPG2
「!」


慌てる拓馬。だが、周りに身を隠せそうな場所がない。


ここは、一本道。辺りはビルが立ち並んでいる。


人影は、多分モンスター。このままでは、見つかってしまう。


拓馬はビルとビルの間の30センチ程の隙間に、無理矢理体を押し込んだ。


気づくな、気づくな……!


そのときだった。


クロが、拓馬の腕を飛び出して歩道へ出てしまった……


「おい、クロ!」


小さく呼ぶ拓馬。


しかし、人影はクロに気づいてしまった。


「クーン」


怯えた声を上げ、人影を見つめるクロ。


人影は、クロの目の前で立ち止まった。


「何だ、アイツ……」


大きさは2メートルくらいの長身。しかし体重は50あるのかと言う程に痩せていて、ムンクの叫びのような顔をしている。


目を赤く光らせ、黒色のマントを身に纏い、そのマントにヒビ割れのような白い刺繍が描かれている。


初めて見るモンスターだが、明らかに強そうだ。


まだ、拓馬には気づいていない。


「フー、フー……」


拓馬から震える吐息が漏れる。


そのとき、モンスターが口を開いた。


「人間の匂いがする。おい、人間を出せ」


モンスターが、クロに向かって言っている。


よくテレビでプライバシー保護に使うような、デジタルに加工された声だった。


コイツ……話せるのか……!
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