グレスト王国物語
「もう入るなよ。」

横目で私を少し睨んだかと思うと、彼女はつかつかとこちらのテーブルへと歩み寄り、腰かけた。

「先刻は、国家警察と知りながら無礼を働いて済まなかった。

知っての通り、私が智の女神、イヴァだ。

女神の涙は、確かに私が持っている。先ほどお前…」

「シルヴァです。」

「シルヴァには女神の涙はすぐに渡すと言ったが、こちらの都合でそうすぐにとは行かなくなった。」

彼女はため息をつくと、何かおぞましいものでも吐き出すかのように言った。

「我が国ガーディアナが、宣戦布告を受けた。

この町を守る為に、女神の涙の魔力が必要になってしまったのだ。

女王陛下は平和的解決を望んでおられるから、あまり心配はいらないが、

ことが済むまでは、面倒だろうが、どうか待機願いたい。」

「待機って…、」

ちらりとブラッドを見やると、彼は目を伏せ、眉を寄せてしまっていた。
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