グレスト王国物語
***

「返信が届いたぜ。指揮官。」

「ガーディアナは、何だって。」

「後日、会談をしたいと。」

「会談か…」

ここは、アタキアナ。

小さな室内に、暗い面持ちの男が2人。

1人は椅子に深く腰掛け、俯いて物思いに耽っている。

そして、もうひとりは肩口にまだ新しい包帯を巻き付けていた。

ブラッドを襲った、あの男だ。

「お前、パートナーは。」

「殺された。ついさっき、ガーディアナの男に。」

「身元がばれるようなものは、持たせていないだろうね。」

「もちろん。」

「そう。…嫌だね。軍人は。…死が、いつも隣にいる。」

指揮官と呼ばれている方の男も、まだ若い。

2人とも、大して年齢に変わりはなさそうな様子だった。

指揮官が、またぽそりと口を開く。

「やっぱり戦争以外に、方法はないのかな。バサナ。」

「何を今さら。アタキアナの民は飢えている。

もう時間がないし、救えるのは、あんたしかいない。」

「だけど、戦争をしたところで…」

「その迷いが今さらなんだよ。あの町は、貿易をするのに邪魔だ。

あれさえなくなれば、我々の国にもっとスムーズに食料が流れるようになる。

あんたは指令官だ。

いくら兵士の準備ができてようが、あんたがうんと言わなきゃ始まらない。」

「ん…そうだね。」

「頼むぜ。しっかりしてくれよ、リヴェル兄さん。」

かたかたと、冷たい木枯らしが窓を叩く。

窓の外は、飢えた人々が呻く声で、溢れていた。
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