コッペリアの仮面 -琺瑯質の目をもつ乙女-
雲に隠れていた満月が少しづつ姿を現す。淡い光が私を照らた。丸でスポットライトの様に。
孤独な私を優しい眼差しで見詰めている。
私は無意識の内に冷たく成った指先を擦り合わせた。
熱電導の現象って不可逆なのに、ね。熱力学の第二法則は最も重要。
「綺麗。月も星も空気も。限り無く澄んでる。冬って何て素敵な季節なのかしら。人を寂しくもさせ、慎ましやかな気分にもさせる。なんて、不思議な時候。四季を感じれるなんて素敵。そろそろオリオン座が良い頃合いね。」
私は空を見上げ、感嘆の溜息を吐いた。私の吐息は真っ白だ。粟立つ肌を無視して。
今迄私が居た所が嘘のよう。
遥かなる天。私は今其れを仰いでいる。
其れを眺めているだけで魂が浄化される様な気すらする。
私は再び目線を落とし、睫毛を伏せた。落蕾した寒椿を弄ぶ(もてあそぶ)。其れに夢中になっていて気が付かなかった。
私にゆっくりと忍び寄る影に。
ふっ 、と
月 ノ 影 ガ
遮 断 サレ
タ ンダ ……