ミッドナイト・スクール
……魅奈は一瞬、信二を酷い人間だと思ったのだ。自分を助けてはくれたが、信二は人殺しをしたのだ。血まみれの彼を見てそう思ったその直後、自分の都合の良い考え方に深く憎悪したのだ。
「魅奈ちゃん? 大丈夫かい?」
見上げて見た信二の目は、普段の優しい目だった。
「ユリ! 後ろだ!」
突然の冴子の絶叫が響いた。
「あっ! くああああ!」
ステージから、ユリの声とは思えない大絶叫が聞こえた。
「ああっ! ユ、ユリー!」
信二と魅奈も、ステージで何が起こったのか確認出来た。
……ステージ上のユリは、後ろから悠子の首なし死体に羽交い締めにされ、切り離された頭に首筋を喰いつかれていたのだ。
不意の攻撃にユリは対応出来なかった。後ろで気配を感じた時には既に遅く、抑えつけられて首に激痛が走った。
悠子ゾンビの頭が首筋から離れた。
途端に、ユリの首筋から間欠泉のように血飛沫が上がる。頚動脈が食いちぎられたのだ。
「ユリぃ!」
和哉がステージに近づくと、ステージの下から種田がムクリと起き上がった。
「お前は寝てろお!」
ガコオンー
金属パットを頭から振り下ろすと、種田をジャンプ台にステージに飛び乗った。
ユリは糸の切れた人形のように、ガックリと膝から崩折れた。
和哉は悠子ゾンビを蹴散らしてユリを見た……が、ユリはほぼ即死だった。
「ぜってーに許さねー、もう、ブチ切れたぜえええ!」
ついに和哉か本気でキレた。
「冴子、みんなで逃げろ!」
襲いかかる警備員を蹴り飛ばし、和哉が叫ぶ。
「和哉、お前も早く来い!」
「わかってる、信二、早く魅奈ちゃんを連れて逃げろー」
信二は、和哉の真剣な面持ちに気圧されて、体育館入口へと走りだした。
魅奈も信二に続いた。
木造体育館の中はだいぶ炎が燃え渡り、灼熱地獄と化していた。空気もかなり薄くなり、走ると酸欠になってしまう。
「はあ、はあ、はあ」
呼吸が大きく乱れた魅奈は、頬に手を当てて熱を遮って走る。
< 131 / 139 >

この作品をシェア

pagetop