ミッドナイト・スクール
どこからか物音が聞こえる。
「何、この音?」

ガサガサガサ。

何か紙を引っ掻くような音が聞こえる。
「生物室からだ」
準備室と連結した生物室のドアを少し開け、後藤は中の様子を窺った。

ガサガサカサ。

音はよりいっそう大きく聞こえた。
「間違いなくここに何かいる」
「何かって何よ? 調べるの?」
「だって調べないと気持ち悪いだろう?」
アイアンを構えると、後藤は悠子を後ろにかばいつつ慎重に足を進めた。
謎の音は窓の付近から聞こえる。窓には幾つかの実験器具と、布を掛けた水槽が一つ置いてあるだけだ。
「あっ、なーんだ、わかった!」
後ろから悠子が声をかけた。
「この水槽でさあ、確かハムスターを飼ってるって生物部の友達が言ってたよ。だから、この音はハムスターが動いてる音だよ」
「何だ、そうだったのか」
クラブを下ろすと、後藤は安堵のため息をついた。
「夜行性だもんねー。どれどれ、ちょっと見てみよう」
水槽に近づくと悠子は勢いよく布をまくり上げた。
「きゃあっ!」
途端に、悠子の悲鳴が上がる。
「どうした!」
「目、目が……」
悠子は水僧を指さし、震えながら後ずさる。
水のない水槽に入れられた数匹のハムスターは夜行性の為か活発に動いているが……何か様子がおかしい。特に異様なのは、その目の色だ。暗い室内の中で妖しく光る赤い目。
その目は先程見た怪物と同じ色を放っていた。
「ハムスターって、こんなに目が赤く光るんだ」
肩を震わせて悠子は言う。
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